最高裁判所第一小法廷 昭和27年(あ)4812号 判決 1954年2月25日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人芳井俊輔の上告趣意第一点について。
本件のごとく被告人が証人審問の機会を与えられていたにもかかわらず、その審問を妨害し、秩序維持のため遂に退廷させられたような場合には、被告人自らの責において反対尋問権を喪失したものというべきであって、証人審問の機会を与えられなかったものということはできない。しかのみならず、本件のように被告人の弁護人が終始証人尋問に立会い且つ被告人のためにその証人を尋問しているときは被告人の反対尋問権は弁護人によって行使されているものというべきであって、被告人自身がその審問に立会っていなくとも差支えないことは、当裁判所大法廷屡次の判例の趣旨とするところである(判例集四巻三号三五五頁以下、同三七一頁以下、同一一号二三〇九頁以下、同六巻二号一三四頁以下参照)。されば、原判決の判断は正当であって、所論は採用できない。
同第二点について。
所論は、量刑の非難で、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎)